2017年11月3日金曜日

仕事ができることより大事なこと

「仕事ができるやつより一緒に仕事をしたいと思われるやつになれ」

20代前半で師匠から言われた言葉の中でも印象深くて、それから大事にして来た言葉です。僕自身わりとこの言葉に救われたり、深い学びをもらったりしてきました。この言葉を自分なりに咀嚼した過程をゆっくりと記事を分けて皆さんと共有できればと思います。

仕事ができるやつ ≠ 一緒に仕事をしたいやつ

「え、仕事ができるやつ=一緒に仕事したいやつじゃないの?」と思ったのが最初の衝撃でした。それも当時の僕の憧れは「お世話になっている師匠や経営者の方々と一緒に仕事をする」ということにあったので、それには「ビジネスマンとして経営者として優秀にならなくてはいけない」と思い込んでいたからです。

今考えるとそのときの僕の「優秀さ」の物差しはとっても狭くて、「思考力」とか「戦略」とかそういうことしか見えていなかったように思います。

なお、この2つのグループが必ずしも一致していないといっているのであって、仕事ができないやつと仕事をしたいよね、という意味ではないですよ。

じゃあ何がその二つを分けるんだろうか、それがおぼろげながら見えてきたのは30歳くらいになるころかもしれません。それを僕なりにまず説明するために、仕事ができる→生産性、一緒に仕事をしたい→関係性と読みかえてその関係性から考えていきたいと思います。

生産性と関係性の話

一般に生産性が高い組織と関係性が良い組織は両立するのが難しいと思われがちです。詳しくはPM理論などをみてもらえればと思うのですが、どちらを大切にするか、つまりコトに注目するかヒトに注目するかで仕事の進め方が異なるためでしょう。

まず「組織は目標を達成するためにあつまっているので、生産性が高い人が一番えらい。仲良しサークルみたいな働き方をして成果が出てない人たちは全く駄目である。」と考えている方がいたら要注意かもしれません。僕が思うに、組織人である前に僕たちは一人一人の人間です。そして人間は論理の前に感情で物事を判断しています。それを軽視して、コトだけに注目が集まるチームはプロジェクトの成果はでたりしますが、人材が成長しなかったり、チームが継続しづらくなります。

またプロジェクトの成果は水物ですから、成果が出ているときは表面に出てこなかった問題が、一旦状況が悪化すると噴出するということがあります。そういうときに関係性のないチームは、役割分担を見直したり、お互いの成長に貢献したりという機能が弱く、チームとしてのリカバリー力がないということが起きえます。

もちろん、「コト < ヒト」ということではありません。PM理論でも状況によって生産性と関係性どちらに注目するのが良いのか、という状況ありきの話ですし、チームが生き物として成長していく地図には二つの方角があるんだ、と理解してもらうのが良い気がします。

もう少し具体的に地図の例を説明してみます。例えばチームの生産性を伸ばす方角を北、関係性を改善する方角を東と考えてみてください。もちろん目指すべきは北東です。地図の使い方としては今自分たちがどこにいるのかを意識して、さらに北に向かうのか東に向かうのかジタバタしてみるという話になります。

例えば成果が必要なチームの状況だととらえ、北に向かっていこうとしてもどうしてもうまくいかない時があったとします。そのとき勇気を持って一旦東に向かってみようとみんなで考えてみる。東に行くためには時には少し南に降らなくてはいけないこともあるかもしれません。

東にいるけど、このままだと北目指さないと死んじゃうな。ちょっとチームのみんなに耳の痛いことを言ってでも、北に行くぞ、といった考え方でしょうか。そのバランスを取る中で少しずつ北東に向かっていくのだと思います。

さて、「生産性と関係性の話が別の話だし両立する話だよね」というのがまず一段階目の「仕事ができるやつ < 仕事を一緒にしたいやつ」の理解してもらうために必要なことでした。次は北東に行くのはなぜ難しいのか、について考えてみます。

生産性がなぜ関係性を殺すのか

さて北に行くと西に行きやすいよ、つまり生産性を重視しすぎると関係性を犠牲にすることがあるよ、という話は頭の片隅に入れておくと良いように思います。

僕が思うに北に行く(=コトに注目しすぎる)と、「今」「その人の存在」を受け取ることが難しくなってきます。「KPIに貢献できない人はいらない」みたいな考え方が幅をきかせてしまい、多くの場合ではチームの多様性や心理的安全性を損ねてしまうコトになりやすいです。多くの場合下記のようなことがスピードを求めるあまり犠牲にされることな気がしています。
  • KPIが短期的でありすぎること。長期的には良いことやってる人や、KPIに繋がる別の人のアクションをアシストしてる人など、短期的に測定しづらいことが軽視されます
  • 人が感情で仕事をしているという事実を忘れたり封印してしまうこと、
  • その人の価値観、多様性に対する尊重の欠如。例えば「プロフェッショナル」という言葉をひとつとっても、それが「決められた時間できっちり一定の成果をあげること」だと思っている人もいれば「できる限り全てのエネルギーを通じて多くの成果を出すこと」だと思っている人もいればはたまた「多くの人と公平に接するコト」だと思っている人もいれば「みんなが気持ちよく仕事できるコト」だと思っている人、「ボールがこぼれないように拾い続けること」と思っている人まで様々ですよね。その人の価値観や過去の成功体験・失敗体験・家庭環境によってそれぞれの人の考え方は全く違います。なので例え同じ結論に至っても全く違う考え方をしていたり、同じ事実を見ても全く違う結論に至ったりすることはよくあります。その人それぞれの立ち位置を尊重(最低限「人と人は違う」と頭で認識する)ことは良い関係を作るためには必須です
  • 最低限の心理的安全性の確保。「何はともあれ、君はひとりの人間としてうちのチームにいてくれて嬉しい」というメッセージを発することができているかどうか。Googleも発表してましたが。 ミーティングとかブレストで特定の人しか喋ってないとか要注意です。知的生産性も下がっています
やや「良いチームの作り方」みたいな方に話がずれてきてしまっているのですが頑張って軌道修正をすると、「生産性と関係性の関係性を知って、バランスをとろうね」という話でしょうか。仕事を一緒にしたいやつ っていうのは少なくとも関係性を築ける人であり、その相克に取り組んでいる人だと思います。

次回予告

だいぶ長い前振りになってしまいましたが、前段として生産性と関係性について思っていることを書いてみました。じゃああらためて後者の関係性を作れる人、作りたくなる人=「一緒に仕事がしたいやつ」としたときに、どうやって関係性を作っていけば良いのか、ということをさらに一つ踏み込んで考えてみたいと思います。

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